話題の本「夫のちんぽがはいらない」 純粋な【感想】
はじめに
はじめてこのタイトルをみた方の中には、不快な不穏な気持ちなられる方もおられるのではないでしょうか。それともあえて「キャッチー」なタイトルを付けているのかなと勘ぐったり。只々、興味、好奇心で読んでみようかと思われる方もいらっしゃるでしょう。
私は、話題になるようあえて挑戦的にこのタイトルをつけて、内容はそうでもないのではないかと邪推していました。
しかし、そこは騙されたつもりであえて読んでみようと本を手に取った次第です。
結論から言うと、騙されたつもりでもなんでもとにかく読んでよかったと素直に思える一冊でした。私の浅はかな邪推をお許しくださいと。
この作品は「普通でいることに疲れた人」
そして、「この本のタイトルに怖気づいて読むのを躊躇している人」にこそ読んで欲しい一冊なのです。
内容
著者こだまさんの「私小説」で「衝撃の実話」だということ。
冒頭
いきなりだか、夫のちんぽが入らない。
本気で言っている。交際期間も含めて二十年、この「ちんぽが入らない」問題は、私たちをじわじわと苦しめてきた。周囲の人間に話したことはない。こんなこと軽々しく言えやしない。
とはじまります。
ここまで読んで興味を持った方はもちろん、なんとなくわかったふりをしている人も、私には関係ないと思った人にも是非もう少し読み進めて欲しいのです。
この物語は、「夫のちんぽが入らない」ことの説明、苦悩を描いているのだけではありません。
その苦悩はずっと傍にありつつ、一人の女性が大人として成長していくなかで、仕事、結婚、子供の有無、健康、などの悩みを咀嚼し、消化していく物語だと思います。
著作こだまさんのユニークさとこの状況さえ楽しもうとする姿勢と、ずっと離れずその傍にある苦悩が、合わさって物語がグンと奥行きのある作品にしています。
物語を読み進めていくと、詩のように、ときにリズミカルに「夫のちんぽがはいらない」と繰り返されるこのワードが特別なことと感じなくなってくるのが不思議です。しかし、それは執拗にこだまさんの人生につきまとうのです。
私たちは、兄弟のように植物のように、ひっそりと生きていくことを選んだ。
そんな夫婦の物語です。
感想
私は気づかないうちに「ふつう」でいることを知らず知らずに追い求めていたのかなと。そして、そのことに疲れきっていることに気づかされました。
ほんの少しの想像力を持つことの大切さ。
話している人たちは、世間話のつもり、何気な聞いてしまうことでも傷つく人がいる事実。
私たちは性交で繋がったり、子を産み育てたり、世の中の夫婦がふつうにできることが叶わない。けれど、その「産む」という道を選択しなかったことによって、「産む」ことに対して長いあいだ向き合わされている。果たしてこれでいいのか、間違っていないだろうかと、行ったり来たりしながら常に考えさせられている。皮肉なものだと思う。
これは「産むこと」だけではなく、「結婚」「転職」など他のことにも当てはまる。
その選択をしなかった人のほうが、そのことを
考え、向き合っている時間が長いのかもしれない。
あの人は、結婚してないから、仕事していないから、子供がいないからと簡単に人は言う。
選択した人、選択しなかった人、それぞれがお互いの背景をもう少し想像することで何か変わる気がする。(自戒の念も含めて)
私は、その想像力がとても尊く思うのです。
是非是非、最後の一文まで読んでみてください。
トピック「夫のちんぽが入らない」について